たわむれ日記

たわむれに いろいろ書き散らします

初鳴き

お風呂上がり
バタフライエフェクトを観ていたら目が冴えてしまい
灯りをひとつだけにして、梅酒をちびりちびりと飲んでいた。

5年ほど前に漬けた梅酒は手付かずのまま熟成され続けていたのだが
最近、気が向いたとき、氷をたくさん詰めたグラスの中に注ぎ飲むようになった。
水は足さない。
ぎっしりの氷に琥珀色の梅酒が浸透していく様子が綺麗。
グラスに添わせるようにマドラーでくるくるするのも手に気持ち良い。
溶けた氷水と梅酒の斑らな味が美味しい。

薄暗い部屋にはジャスミンの濃厚な香りが漂っている。

 

雨上がりの夕方、雲が切れて青空がチラリと見え、雲の隙間から橙色の夕陽が眩しく射した。
空気は温かい。
雨戸を閉める前に日中淀んだ空気を流そうと、庭に向いた掃き出し窓を大きく開け放ったら甘い匂いが漂った。

鉢植えのジャスミンだ。
冬、寒さに怯んで植え替えを怠り、根がぎゅうぎゅうになっちゃってるジャスミン
付けられたカマキリの卵からはたくさんの赤ちゃんが旅立っていったジャスミン

肥料はあげていたけれど、植え替えをしなかったのでちょっと元気がない。
それでも蕾をいくつか付け、ぽちぽちと咲いた。
ご近所のジャスミンはもう花が終わったので、うちももう終わりだなと思っていたのに、また咲き出してくれた。

大好きな香りに誘われ数枝切って、部屋に飾った。

濃く甘く妖しく薫る

ジャスミンて薔薇よりもセクシーだと思うの。
楚々としていながら妖しさがある薫り。
ジャスミンは夕暮れ時や夜が似合う。
反射的にムーミンのお話を思い出す。

 

甘く濃い薫りに包まれながら、眠気が来るまでベッドに入って本を読んでいた。
クッションを背中に当て、吉田篤弘さんの不思議世界に旅していた。

窓辺に置いたグラスからカランと氷の落ちるタイミングでふと顔を上げたら、声が聞こえた。

なに?

鳥の声だ。

遠くから近づいてくる。

あ!
初鳴き、ホトトギス

初夏を告げる声。

何故だかホトトギスの鳴き声がとても好きだ。
東京特許許可局 とは全然聞こえないけど。

夜を渡るホトトギスの声を聞くために、今夜は目が冴えていたのかも。

 

一声、二声、夜空を渡っていき、そのあとはどれだけ耳を澄ませても聞こえなかった。
風に乗って遠くから微かに蛙の合唱。

初夏だなぁ

日に日に夜明けが早くなり、光が透明感を増し、新緑輝く大好きな季節の到来だ。
なんだか嬉しくなってきちゃったぞ。

 

初鳴きを聞けたことに満たされて灯りを消しベッドに潜った。
闇の中にジャスミンがまた濃く薫った。