たわむれ日記

たわむれに いろいろ書き散らします

凍雲の下、母に会いに

金曜日。
天気予報通り、昨日とは打って変わって灰色の雲が空を覆い、グッと冷えた。
午前中は時折陽射しが覗いたが、お昼を過ぎると雲が厚くなった。太陽が姿を隠すと体感温度も一気に下がる。
今日は母が入院する病院へ自転車で面会に行く予定だが、このままぬくぬくと部屋の中で引きこもり、読書三昧なんてのも最高なんじゃない?って悪魔が囁く。

一瞬それもいいかぁ、一昨日会いに行ったし来週でも…
悪魔方面に気持ちが傾いたが、時間になると無意識に身支度をしていた。

病院へはのんびりママチャリで片道1時間ちょい。
周りの景色を楽しみつつ行く。

曇りの今日、周りの景色はまさに冬枯れ。
野も山も硬く無表情な感じ。
けれど雲間から陽が差し照らされている山肌は、そこだけ色鮮やかだ。
モノトーンの山肌に極彩色の織物が広がっているよう。

太陽の力って偉大。

一昨日は3月下旬の陽気で手袋とマフラーを外し、ダウンの前を開けてペダルを漕いでいたのに、今日は完全防備。
それでも病院に到着した時には軽く汗ばんだ。

今日の母は、体の向きが変わっており目を閉じていた。
お母さん
耳元で声をかけると、瞼がゆっくり開いて、驚いたような表情。
お母さん、彗だよ、会いに来たよ
ーあら、まぁ
表情豊かに声を出して答えてくれた。

頬やおでこ、髪を撫でる。やさしく、やさしく。
そしていろいろと話しかける。
母は目を開いて瞳を動かす。そうだねぇとかそうですよぅとか声を出して答えてくれた。施設で面会していた時よりも反応が良い。

白内障が良くなっているように見えるのは、室内だからだろうか。もっと白濁した瞳だった。まさに死んだ魚のようで、もう見えていないんだろうなと胸が打たれた。

けれど今見ると、それほど白く濁ってないし、視線に力がある。
高栄養の点滴と寝ている体勢が良いのかもしれない。
施設では車椅子に半分寝るように座った姿勢で目を閉じていることが多かったから。あの姿勢は辛かったのかも知れない。

この病院は予約不要で面会出来るが、1日に親族2人のみ10分間。
10分なんてあっという間だが、それでも会えないよりずっといい。

高栄養の点滴は身体への負担が大きく、だんだん痩せ細っていくと聞いているが、今のところ以前と変わりはない。点滴に切り替えてまだ1ヶ月ほどだから楽観は出来ないけれど。
肌艶も良く、目力もあった。

歌が好きだった母、YouTubeの小学唱歌を流していたら目を閉じてしまった。
どうやら少し疲れたみたいだ。
時間も来たので、また来るね、元気にしててね、と病室を出た。

たった10分病室に居ただけなのに、外の空気は来た時より下がったみたい。ニット帽を被り、帰路に着く。

行きは会いたい一心で寄り道もせず行くが、帰りはのんびり。
冬枯れの茶色い草むらに、よもぎの淡い緑を見つけた。

よく見るとそこここに結構ある。
枯れたように見えても、生命は脈動している。
何となく嬉しくなって、勇気をもらえたようで、ペダルを漕ぐ足が軽くなった。

 

 

 

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