眠りの底から浮かび上がり、目が覚めた。
物音ひとつせず、真っ暗。
あまりに冷えるので南側のブラインドをきっちり閉じたからだ。
昨夜は気づいたら雨垂れの音がしていて、あぁそうだ帰り道ポツポツ来ていたなぁと耳をすませたのだった。
むっくりと起き上がり、テーブルに置きっぱなしにしていたマグカップにポットから熱い湯を注ぐ。両手で持って、カップ越しに湯の暖かさを感じてみる。じんわりゆっくり熱が伝わってくる。
冬仕様の寝床はふわふわもふもふで暖かく、ふんわりしたベッドの座り心地と、素足をおろした床の冷たさ、部屋の暗さに深夜を感じた。
何時だろう、とiPhoneに手を伸ばす。
午前2時58分だった。
画面のあまりの明るさに目が射られて、すぐに裏返した。
雨は止んだようで閑としている。
ブラインドを上げ、窓を開けた。
一瞬の間をおいて、冷えた空気が小川のように流れてきた。
夜の匂いを嗅ぐ。
町を、道を、暗闇を透かして眺めた。
人が暮らす音が一切せず、今この世界で起きているのはわたしだけみたい。
少しぬるくなった湯を飲む。
暖かさが喉からお腹へと降りていく。
お腹がじわっと温かくなる。
そのまましばらく深夜の寝静まった町を眺め、聞いた。