くったりと疲れた金曜の夜。
NHKの番組「72時間」が、パキスタンにあるアフガニスタン食堂が舞台だったので観た。9時間撮影したところで店主が怒り始める。撮影については現地のコーディネーターと話がついているはずなのだが、何が気に障ったのか。結局食堂で撮影を続行できず、アフガン通りといわれる通りで撮影をしていた。
戦火から逃れてきた人々、まるで違う文化と風習。わたしのみならず日本人には想像出来ないような複雑な事情があるんだろうな。
パキスタンとアフガニスタンはいつか行ってみたい国だった。
今は無きはてなダイアリーで運営されていた大好きだったブログで見た、パキスタンとアフガニスタンの荒々しくも壮大な風景が忘れられない。
英語やヒンディー語、タミル語も話せるインド在住の日本人女性が、パートナーと一緒に、徒歩でしか行けないインド辺境の地や、現在は危険すぎて行けないカシミール地方やパキスタン、アフガニスタンなどへ旅をした記録。旅というか探検、探求といった方が相応しい内要だった。
どの記事も写真も素晴らしくて、それこそ日々の楽しみでむさぼるように読んでいたのだが、気づいたら無くなってしまっていた。もう数年前のことだ。
どうして削除されちゃったのかな。
旅の行程、風景、食事、村の人々の暮らしなどなど、今でもまだ忘れられない。もういちど読みたいと切に思う。叶わないけれど。
徒歩でしか行けない場所が地球上には無数に存在していて、わたしが知らないその場所は、この瞬間も確かに同じ星の上に今もひっそりとあるんだなぁ
意識がぱぁーっと広がって行って、何とも壮大な不思議な気持ちになる。
そんなことを思いつつ、続けてEテレのドキュメンタリーを見始めたのだが、気持ちが重くなってしまい、こんな気持ちで眠るのは嫌だなぁとテレビを消した。
トイレに立つと、薄く開けた窓からシャーっと優しげな音が聞こえた。
雨だ。
部屋に戻り窓を開けると、ひそやかな雨の音に包まれた。
やさしい、やさしい雨の音だ。
慈雨、という言葉が浮かんだ。
夜の闇にぼーっと白く浮かび上がるのはプラムの白い花。
まるで小さなぼんぼりが灯るよう。
催花雨。
花を咲かせるようにしとしと降る。
雨の匂いを嗅ぎながら、雨の音をしばらく聞いた。
少し冷えたので、ベッドに腰掛けて白湯を飲んだ。
と、お寺の鐘がごぉーんと一つだけ鳴った。
こんな時間に?
顔を上げ耳を澄ますが、もう聞こえない。
春休みに入った子どもの悪戯だったのだろうか。