たわむれ日記

たわむれに いろいろ書き散らします

百合とカマキリ

7日、月曜日。白百合が今年も咲いた。

何処からか種が飛んできて芽を出したのを、これは一体何?と見守り正体を突き止めたのが数年前。
以来、種を飛ばし成長を見守って開花するのを心待ちにしている。

去年は種が出来た頃に初孫ちゃんが茎を揺らし、種を庭中にばら撒いてくれた。
おかげで、今年はあちこちから芽が出た。

我が家では立秋の頃に咲き始め、お盆の辺りで最盛期となる。
2020年、父の新盆にこの花を供えた。
真っ白清らかな姿で、父を歓迎してくれているような気がした。

この白百合が咲くと、お盆だなぁと思う。

 

百合を撮っていたら何か視線を感じ、目を凝らすと日々草にカマキリがいた。

草取りをしていていきなり目の前に現れるとドキッとするが、嫌いな虫じゃない。
花や葉を食べてしまう虫を食べてくれる。
たぶんこのカマキリはこの庭で生まれ育ったのだと思う。
ジャスミンに産み付けられた卵からたくさん孵っていたから。

きれいな若草色のカマキリ。

以前、京都に住む友人が遊びに来た時、お土産に手ぬぐいをもらった。
どれか好きなの選んで、と言われてカマキリと車輪?と桔梗?の図柄のを選んだ。
手ぬぐいには「蟷螂山」とあって、ずっと「蟷螂山」という山があるのだと思っていた。蟷螂=カマキリが神様なのかしら、なんの謂れがあるのかな?

調べてみたら、祇園祭で巡行する山鉾のひとつだった。
手ぬぐいをくれた彼女とは疎遠になってしまったが、実物の蟷螂山を見てみたいとずっと思っている。
手ぬぐいは祭礼授与品で毎年図柄が変わるらしい。

今年の祇園祭はかなりの人出で大賑わいだったとニュースで見た。
そこそこの賑わいの中で楽しめたらなぁと思う。

 

そしてカマキリを見るたびに思い出すのは、杉浦日向子さんの大好きな漫画『百日紅』。
葛飾北斎とその娘で絵師でもあるお栄や実在した絵師たちを軸に、江戸の暮らしや風俗を描いた魅力的な作品である。

その中に、カマキリが登場する話がある。

ある夜。北斎の妻と体が弱く目の見えない末娘・猶(なお)と三女のお栄が蚊帳の中で枕を並べて寝ている。末娘が蚊帳の上に何かいると言う。お栄が確かめると大きなカマキリだった。大きな虫だった、もう外に出したから大丈夫と伝えると

虫、、きれいな虫?

うん つめたくてほっそりとしてサヤエンドウのようだよ

やさしい?

やさしいよ

かわいい?

かわいいよ

お栄と猶の会話の場面が切なくほんのり恐ろしげで、不吉な予感に満ちていて、カマキリを見ると思い出し、その姿を見入ってしまう。

漫画では、お栄が添い寝した次の日に猶は逝ってしまう。
母親の、逝っちゃったよ。の一言がもの悲しくてじんわりする。

 

百合はさっそく仏壇と玄関に飾った。

夜、雨戸を閉めようと仏壇のある和室に入ると、闇の中に百合の甘い香りが筋となって流れていた。