たわむれ日記

たわむれに いろいろ書き散らします

母に会いに

昨日とは打って変わって、起きてすぐ暖房のスイッチを入れた朝。
パジャマの上にフリースを羽織り、家中の雨戸を開ける。
東の窓からオレンジ色の光がスーッと道を作る。
西側の部屋の窓から外を見ると富士山が紅く染まっていた。

今日は久しぶりに母の面会へ。
予約が取れなかったり、わたしが風邪を引いたりで3週間ぶり。
天気が良く風もないので近くの小さな公園へ車椅子を押して行った。
先週は風が強過ぎてちょっと出ただけですぐ戻ってきたらしい。

施設から出ると閉じていた目がふっと開いた。
目が開くのは久しぶりで、兄と喜び合う。
きっと気温差が良い刺激になったんだね。

日向に出ると眩しさでまたすぐ閉じてしまったけれど、少しでもいつもと違う反応があると嬉しい。
日向ぼっこをしながら、母の耳元でいろいろ話す。
話すと言っても途切れがちなんだけど。

何を話していいのかわからない。
教員をしていた母は仕事と家庭でいつもイライラしているように見えた。
話しかけると、うるさい!忙しいんだからあっち行ってて!とヒステリックに言われることが多かったし、たまに聞いてくれも最後には説教になってしまうので、そのうち両親と会話することを諦めた。

親と会話を楽しむような家庭ではなかったから、今でも母を前にして何を話したらいいのか戸惑ってしまう。

子供の頃は、ただ聞いて欲しかったんだよね。
説教になってしまうんじゃなく。
聞いて欲しかったし、会話を楽しみたかった。

今の母はもうキャッチボールのように会話を楽しむことは出来ないけれど、聞いてくれている。それは、確かだ。
目を閉じて反応は薄いけれど、ちゃんと聞こえてる。聞こえてわかってる。
母を間に挟んで兄と話していると、時々「へー」とか「ははは」なんて言ったり。

子供の頃叶えられなかった望みが今、叶っているのかも。
とても皮肉なかたちで。

20分の面会はあっという間に終わった。
帰りがけ、兄がスタッフの方に保湿ローションを渡す。
今日も顔色は良好だったが、肌がカサついていた。

ローション塗ってもらってね、お肌のお手入れちゃんとしないとね! と耳元で言うと、
はい、そうだねー
大きな声で答えてくれた。