たわむれ日記

たわむれに いろいろ書き散らします

朝風呂の季節と読了『ドゥルガーの島』篠田節子

休みの日や出勤がゆっくりな日に、朝風呂が嬉しい季節になった。

朝は暖房のタイマーをかけて温まった部屋で起きているけれど、体は案外冷えていて、冬の時季は朝風呂を楽しむのがここ数年の定番になっている。
気ままな一人暮らしだから叶えられる贅沢かもしれない。

湯船に浸かりながら毎回、温泉に行きたいなぁと思ったり、いや家のお風呂でも十分と思ったり。
ゆったり浸かるとその日一日、気分にも余裕ができ、優雅な気持ちで過ごせるみたい。

先月から手首の調子が悪くて湿布を貼っている。
体の歪みと姿勢の悪さからきていると思う。ヨガやストレッチをすると軽減されるので。さらに夜と朝、湯船に浸かった日は手首の調子も良い気がする。

1日2回も湯船にお湯を張るなんて贅沢かな、と思うけれど、毎日じゃないし。
そうじゃない日も朝シャワーを浴びてるし、ガスも水道も料金はそう大差ない感じ。ただし今年は値上がりしているからどうかな。

日々のちょっとした養生をケチると大病に繋がり、かえってお金を費うことになるとも限らないので、こんな贅沢を自分に許している。

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昨日の夜はテレビも動画も観ず、手が止まっていた本を読み終えた。

篠田節子さんはだいぶ昔に読んだ、『聖域』『弥勒』以来。

その女神の名を、唱えてはいけない――。民族史を覆す宗教遺跡をめぐる海洋冒険譚! 大手ゼネコン勤務の加茂川一正は、インドネシアの小島で海底に聳え立つ仏塔を発見する。一正はこの遺跡の保護を自らの使命とし本格的な調査に乗り出すが、次々と障壁が立ち塞がる。住民の反発、開発を優先する地主、他宗教からの弾圧……人間の欲望が女神の怒りに触れたとき、島に激震が走る。圧巻の長編エンタテインメント!

ブクログのおすすめに出てきて、題名といいあらすじといい大好物の予感がひしひしとした。予約をしてようやく手元に来たのだけど、期待し過ぎちゃったな、というのが正直な感想。

弥勒」が読み応えがあり、物語の厚みと深みがハンパなかったから尚更そう感じたのかもしれない。
かといって、この物語が薄っぺらいということでもない。
弥勒」が凄すぎたんだと思う。

ボロブドゥールよりも遥か昔に栄えた王朝があった、その痕跡をしぶとく追いかける展開は面白かった。

信仰する宗教や文化の違いによって起こる差別、偏見。文化遺産の価値が分からず破壊してしまう地元の民、開発を最優先の地主など、問題提起の側面も。

読み始めは主人公に対して好感を持っていたけれど、だんだんと嫌になってしまった。こんなことは初めて。悪気がないぶん、始末に負えない。

主人公と一緒に調査をする、大学准教授の藤井、特任教授の人見が良い。熱く突っ走りがちな主人公をうまく操縦して大人な対応。主人公よりむしろこの二人に興味が湧いた。藤井や人見を主人公にした物語を読んでみたい。

遺跡の価値を分からず、土台や道の敷石にしてしまうような文化、日本でも遺跡が出てきたら工事は中断されるし経済的な打撃が大きいことから、届出せず壊してそのまま工事続行、なんてこともあるらしい。
そんなことは世界中で行われていて、もしかしたら世紀の大発見が埋もれてしまった可能性もあるな、と思ったり。

あと、マヒシャが治療に用いるマメ科の植物の雄しべ。物語ではアルカロイドが含まれ幻覚作用が認められることから、主人公はやられた!と悔しがるが、人見は『ただ治したかっただけ。現に良くなったでしょう?』とあしらう。

現代では薬物、麻薬とされるものは、古くから治療に使われていたものが多かったのかもしれないと思った。
現代になって、トリップする、キメる、快楽を得る目的で使われるようになってしまったけれど、もともとは違っていたんじゃないか。

人は古代でも現代でも生きていくうちに、さまざまな価値観や思い込み、思想に触れていく。得てしてそれは、自分自身の本質を覆い隠し、苦しみをもたらすこともあるだろう。

治療に用いられる薬草の効能で、本質を二重三重、幾重にも覆って深く隠してしまったものを取り除き、本質に直接働きかけることで、体や心を治していく、そんな方法を古代のシャーマンたちはとっていたんじゃないか。

そんなことも強く思った。

 

弥勒』と『聖域』を本棚で探したら『ゴサインタン』も出てきた。どんな話だっけ?と開いたら栞が挟んだままになっており、あぁそうだ途中で挫折したんだと思い出した。その当時は読んでいるうちに重苦しい閉塞感に息が詰まりそうになったんだった。いつか再チャレンジしてみたい。