たわむれ日記

たわむれに いろいろ書き散らします

3月に読んだ本

春の肝臓疲れと花粉症による眼精疲労が著しく、仕事以外の本で読んだのは3冊。

3冊とも心に癒しを与えてくれるような世界。
このところずっと、そんな気分だ。

『運転者 未来を変える過去からの使者』喜多川泰 著

話題になっていた本で、図書館の順番がようやく回ってきた。

さて一言感想をと気持ちの頁を頭の中で手繰ると、『夢をかなえるゾウ』みたいなお話だな、とぽんと浮かんだ。

読み終わった直後、『ああ亡くなった父の想いも行動も何もかも、全部ぜーんぶ報われるんだ』とホッと安心したし、その後の幸福感たらなかった。

肉体としての存在がこの世界から無くなっても、亡き父の行いも熱き思いは様々な形、様々な恩恵としてその後に続く世代へと受け継がれていくんだ。

この本の読み方としては違うかもしれないけれど、心の底にわだかまっていた「父の人生って」という想いが優しく解きほぐれた。

読んで良かった。

『流星シネマ』 吉田篤弘

どこかのSNSで見かけ、読んだ本。初めての吉田篤弘さん。

この世界はいつでも冬に向かっている

書き出しで心を掴まれた。

鯨塚とも呼ばれるガケ下の町で、「流星新聞」を発行するアルフレッドの手伝いをしながら暮らす太郎。
「メアリー・ポピンズ」を愛するが故そっくりの服装をしている幼馴染のミユキさん、ガケ上で『ひともしどき』という詩集屋を営むカナさん、聞こえ難い耳を持つピアノ弾き、朝まで営業しているオキナワ・ステーキを営むゴーくん、不思議なロシアン・コーヒーとカレーが売りの『バイカル』という喫茶店の椋本さんなど、個性的な町の人々と緩く関わり合いながら。

一人一人との緩い交流はやがてゆるやかに合流し、共鳴し合い、やがて静かな感動の結末へと向かう。

初めて小川洋子さんを読んだときのように、誰とも似通っていない、吉田篤弘さんの世界に魅了された。

この世界はあらゆるものが寄せ集まって出来ている。
人もその一部で、人ひとりだってたくさんの要素で出来ている。

人の様々な物語が、ある面である点で触れ合って響き合って繋がり合って、この温かな物語になったんだと感じた。

『屋根裏のチェリー』 吉田篤弘

『流星シネマ』とリンクする小説で、人が緩やかに再生していく物語。

心を閉じて引きこもってしまう期間って誰にでもある。でもそこから踏み出すタイミングも必ずある。何故なら、この世界は変化していく、ということが変わらない唯一の真理だから。

人が目の前のことを誠意をもって行っていると、自然とそれは、水面に石を投げて波紋が広がるように、人々に影響を与えていく。意識しなくてもそれは起きていく。

閉じていた心を開き、自らを生きる時、それはまるで関係のない人々にも良い影響を及ぼす。

読後は清々しい気分になった。

 

今までの読書傾向として、お気に入りの本を何度も読み返すことが多かったが、ブログやSNSで心惹かれる本を見つけ、新たな世界が広がっている昨今。
読みたい本が目白押し。