たわむれ日記

たわむれに いろいろ書き散らします

捨てずに良かったもの

荒ぶる海

時間を見つけては実家の片付けをコツコツとしている。

昨日はすっきりしてきた2階納戸に再び侵入。埃をかぶって積まれている頂き物の箱を引っ張り出し、黄ばんだりシミの浮き出たシーツなどを整理。
エス用の袋に入れ、箱は潰して紐でまとめた。
棚に出来たスペースを見て満足感に浸る。

捨てられないものもまだあって、その筆頭は父のもの。

亡くなってもうすぐ3年になるが、父の書斎を兼ねた応接間にある昭和の時代の机とその中身、父の筆跡の残るノートなんか見てしまうと、いまだに胸が潰れそうになる。

仲の良い家族でもなかったが、わたしは親不孝を山ほどしてきた鬼娘なので。

なかなか捨てられない父の遺品だけれど、着古した衣類や下着などは意を決して処分した。
それでもまだ残っているのがスーツ。スーツというより、背広と言ったほうがしっくりくる。

父の時代は”洋服の青山”や”AOKI”のような量販店はないので、テーラーで仕立てていた。お気に入りの店が2〜3軒あったように記憶する。

生地を選び、採寸し、昭和の職人が丁寧に作った背広。もちろん内側にはネームが刺繍されている。

朝、整髪料とシェービングクリームの匂いを漂わせながらピシッと背広を着た父はカッコ良かった。思いなしか姿勢もしゃんと胸を張って。背広姿の父を見るのが好きだった。

そんなことを思い出し、洋服ダンスに並んでいる背広三揃いを捨てられずにいた。
が、お正月、甥っ子たちが来た時に、兄と一緒になって、残しておいたコートや背広を代わる代わる羽織っていた。

コートは兄にぴったりだったし、背広は甥っ子が着てもおかしくなかった。
父の体型に似ているのかな。仕立ての良いオーダーメイドの背広、チョッキ、レトロな形や雰囲気が気に入ったみたい。
これちょうだい!と1着をご機嫌で持って帰った。

なんだかわたしも嬉しくなった。
捨てないでいて良かったな。

そういえばわたしも学生時代に、父の古いウールのコートを貰い受けて愛用していたことがある。重くてかさばるコートだったけれど、やはり内側に苗字の刺繍がしてあって、レトロな感じが好きだった。

出来るだけ身軽に暮らしたいし、後の世代のためにも不用品はすっきり片付けておきたい。けれど、あまりにポイポイ処分してしまうのもなぁ。
取捨選択が難しいところ。