たわむれ日記

たわむれに いろいろ書き散らします

イブの災難と読了『ミッテランの帽子』

きらり 透明な冬の陽

Happy Holiday!

雲ひとつない、水色の空が広がるクリスマスの朝。
冬の空の色ってどこか凛としていていいな。

昨日のイブは悲喜こもごもな一日だった。

午後、早めに出てお気に入りのパン屋さんでクリスマス会用のパンを調達後、仕事に向かったのだが人身事故に巻き込まれてしまった。

実は人身事故の前にも踏切で緊急停止ボタンが押されたとのことで、一時運転見合わせになった。急いで仕事先にLINE。幸いにもLINEの返事が届く頃に動き出し、ホッとしたのだった。なのに追い討ちをかけるように人身事故。クリスマスイブに人身事故。

迷惑極まりないが、そうせざるをえなかった方の心を想う。そこまで追い詰められてしまった心の動きに。
それは決して、他人事ではないのだ。
いつ何時そのダークゾーンに嵌ってしまうか、誰にもわからない。だからこそ怖い。

車内放送では、人身事故が起きたばかりとのことで、運転再開は未定だが16:40頃を予定しているという。情報をそのまま仕事先にLINE。結果、今日の仕事はキャンセルとなった。いつ到着出来るかわからない状態でどうしようもない。
数名のクライアントさんも事情を話し、了解していただいたとのこと。
せっかくイブの日に足を運んで下さったのに申し訳ない。
皆さんの貴重な時間を無駄にしてしまった。

ところが、仕事先からキャンセルにします、との連絡をもらったとたん、急に電車が動くと言う。

なんの前触れもなく、急に動きますとのアナウンス。
このまま本当に動けば約束の時間より20分ほど超過して到着出来るはず。でも、もうキャンセル決定してしまった。後の祭りとはこのことよ!
あと少し動くのが早ければキャンセルにはならなかったはず。

わたしには責任がないものの、なんとなくモヤモヤしたものが残った。

キャンセルになった分、来月のわたしの収入は減る。
なんとも複雑な気分でもある。

でも仕方ない。

自分の力でコントロール出来ない範疇での出来事だ。

わたしの努力でどうすることも出来ない。

分かってはいるけれど、フリーランスのわたくし、その仕事先は今年最後の業務だったため、尻切れトンボみたいな中途半端な終わりとなってしまった。

キャンセルが決まったとたん動き始めた電車。
しかし地元に戻るラインは止まったまま。
そのまま駅で30分以上寒風に吹きさらされながら待ち、電車に乗った。

何にもしていないのだけれど、とにかく疲れた。へとへと。

いやでも、電車に飛び込んだ人は人生にへっとへと、一歩の前進が出来ずに飛び込んでしまったわけだから。。。

今夜は息子家族が泊まりに来る。賑やかなイブになりそう。
彼らが到着するまで、心を切り替えるべく読書をした。

 

読了したのは、『ミッテランの帽子』。

このところずっと日本人作家ばかり読んでいて、ひさびさの海外小説はフランスのかた。

物語は1980年代、携帯電話もインターネットも、もちろんSNSもない時代が舞台。

ミッテランブラッスリーに置き忘れた帽子を、隣席の男が盗んでしまう。そこから帽子の旅が始まる。幸運にもミッテランの帽子を手にした4名は、それぞれの停滞していた人生が思いがけないかたちで好転していく。

1986年議会総選挙で大敗したミッテラン大統領が再びその座を取り戻すまでの2年間、帽子が本当の持ち主から離れ、手にした4人が感じた帽子の不可思議な力。
まるで帽子に意思があるかのように人々を旅して行くが、その行方は。

 

夏以来の海外小説、フランスはパリが舞台なので、フランス国民じゃないと分からないような表現もあり、訳註がついている。海外の小説ってそうだったそうだった!いちいち小説の世界観が中断されちゃうけれど、よく分からないまま読み進んでもなんなのでふむふむと消化。

4人の人生がそれぞれが変わって行くところまで読んで、すこしダレた。この調子が続くんだろうか。かったるいなー

と、思いきや、最初に帽子を盗み、電車に忘れてしまった男が帽子に執着し探しはじめ、とうとう見つけ出す。
その先からまた頁を捲る手が止まらなくなった。

物語は意外な方向へ進み、読了後は作者の巧みさに唸ってしまった。

さらに訳者あとがきも作品を理解するのにとても役立ち、作者と実際のミッテランの帽子との意外なつながりにも驚いた。

この世の不思議さよ。作者もミッテランの帽子に選ばれたのかも知れない。

アントワーヌ・ローランはTwitterで流れてきて知った。
新潮クレスト・ブックも初めて知った。このようなシリーズがあったとは!迂闊でありました。
手に取ったときの適度な柔らかさ、大きさ、装丁の知的でおしゃれな感じ、さあこれから落ち着いて本を読むぞ、という静かな決意へと導いてくれる。
どんな世界に導いてくれるんだろう、わくわくさせてくれる。

やっぱり紙の本が好きだなぁ。

次も借りてある。
しばらくはアントワーヌ・ローランの世界に浸ってしまいそうだ。