夏にガクンと失速した読書も秋の訪れとともに加速していき、読みたい本が目白押しの今日この頃。新しい出会いがあったのだ。
作家の名は青山美智子さん。
秋の気配がようやっと感じられる頃に片付けをしていて、積読の山から見つけたのが、書店のカバーをしたままの『鎌倉うずまき案内所』。
あぁそういえば久々に入った大型書店、あれもこれもと立ち読みし、最終的にこの一冊を書名に惹かれて買ったのだった。
大好きな鎌倉。好き過ぎて、数年間住んだこともある。いざ住んでみると、小町通りとか全然行かなくて、レンバイやアレイ、飲みなら天昇、友達がママの日のラム。もっぱら自宅から歩いて行ける鎌倉山のシェアハウスやEちゃんちに入り浸ってた。当時は小町通りから脇に入った小道に満月になると開店するワインバーがあって、そんな脇道なら多少土地勘がある。物語を読みながら、あ、これ、あのあたりかな?なんて想像しつつ。
古ぼけた時計店の地下にある「鎌倉うずまき案内所」。そこには、双子のおじいさんとなぜかアンモナイトが待っていて・・・。会社を辞めたい20代男子、ユーチューバーを目指す息子を改心させたい母親。結婚に悩む女性司書。孤立したくない中学生。40歳を過ぎた売れない脚本家。ひっそりと暮らす古書店の店主。平成を6年ごとにさかのぼりながら、悩める人びとが「気づくこと」でやさしく強くなる。ほんの少しの奇跡の物語。
ー裏表紙のあらすじより
一話読み終わるごとに、心の中が掃除されていくような感じ。この爽やかさと暖かさはなんだろう。
読み進めていくと、物語はそれぞれ繋がっていることが分かる。あれ?この人って確か。。。読みながらにやにやしている自分に気づく。にやにや、しちゃうんですよ。ははーん、ってね。
何だかもやもやするー!って思ってると、外巻さんと内巻さんの書き下ろし短編があり、さらに嬉しや、年表までついていた。
年表でもやもやは解消されたものの、もういちど読み返す。とまた、違う味わいが。
気持ちが前向きになる物語はともすると説教臭くなったり、押し付けがましい感じや感動しろよ!って煽られているように感じるものがあるけれど、この作品はそんな感覚は全然感じられなかった。すっと心に真っ直ぐ入ってくる感じ。
ああ、こういう物語、読みたかったんだなって素直に思えた。心の栄養剤。つと鏡に映った自分の顔を見て、表情が優しくなっていた。
ナイスうずまき!
で、発売中の本を図書館で軒並み予約した。
本屋に走り大人買いしたいところだけれど、クリスマス、年末年始に備えて節約モードなので。。
案の定人気で、どの著作も順番待ち。一番に順番がきたのは『月曜日の抹茶カフェ』と『ただいま神様当番』。
どちらも良かった。青山美智子ワールド全開って感じ。
『月曜日の抹茶カフェ』で好きなフレーズ
俺は思うんだけど、望み通り想定したままのことを手に入れたとしても、それだけじゃ夢が叶ったとは言えないんだよ。そんなふうに、どんどん自分の予想を超えた展開になって、それをちゃんとモノにしていくっていうのが、本当に夢を実現するってことなんじゃないかな。 p178
でも一番素晴らしいのは、遠いところで手をつないできた人たちが、自分がどこかで誰かを幸せにしているかもしれないなんてまったくわかってないことだね。それがいいんだ。自分の身の回りのことに取り組んだ産物が、あずかり知らぬ他人を動かしたってことが。 p180
神社の生垣でカマキリの卵を見つけた子供達。卵が孵るときにはカマキリのお母さんもお父さんも側にいないよね、ってことに気づく。
子供達の中には、両親が多忙でお手伝いさんが親代わりの子供もいる。けれど彼はそのことに不満も寂しさも感じていない。お手伝いさんがいつも側にいてくれて、両親が安心していること、その日にあったことをお手伝いさんがきちんと親に伝えて、親も子の成長を涙を流して喜んだりする。両親がいて、お手伝いさんがいて、でもそれって変なことなのかな。僕って可哀想なのかな。
カマキリの赤ちゃんはお父さんもお母さんもいなくて、いったい誰が育ててくれるんだろう。どうやって大人になるの?
子供達の疑問に神主さんが答える。
みんなで育てるんですよ
それは、みんなみんなですよ
カマキリの赤ちゃんも、そこにあるツツジも、そしてあなたたちも同じことです。生きているものはすべてひとしく、お父さんとお母さんにかぎらず、みんなみんなに育てられて大きくなるんですよ p193
わたしまで、大きくてあったかい何かに包み込まれたような気持ちになった。
『ただいま神様当番』は、主人公たちの悩み、想いに、あるある!って頷きながら読んだ。
神様は、実はいつも私たちの中に在る。
その声を聞こうとする意識があれば、好好爺のような神様に登場して頂けなくても聞けるのかもしれない。
青山さんの小説に共通する、物語が何処かで繋がっているのも好き。
2度3度読み返して噛み締めたい世界だ。
P110のお母さんの言葉、
でも、罪をかぶることや我慢することが優しさではないのよ。千帆には千穂の大切な道があるの。忘れないでね。困ったことがあったら、こうやっていっぱい甘えていいのよ。中学生になっても、大人になっても、ずっとずっとよ。
こんな言葉、子供の頃にかけてもらいたかったな。
青山さんはnoteもされていた。さっそくフォローした。
おお、去年文庫になったときは鶴田真由さんが帯でコメントしていたらしい。見たかったな。。
鶴田真由さんといえば、円覚寺の盆踊り前に友達の友人の家に立ち寄ったらそこにいらっしゃって、超絶びっくりしたことがあった。私的な場なので、内心の驚きを隠し、平静を保った。彼女の周りだけ光っているように美しくて、女優さんてやっぱり違うのねと思った。ツレのヨガ講師Bが彼女と知り合いだったようで再会に喜びデレデレしていたっけ。
ちなみにそのヨガ講師Bが履いていた雪駄を褒めたら、海老蔵(今は團十郎白猿)にもらったんだと言っていた。ヤツの交友関係って一体。。。そういえばBのスタジオに通っていた友人が、クラスに海老蔵が来ていて皆んな知らんぷり、練習に集中しているように見えて実はドリシュティ(視点、視線、集中の一点)は海老蔵なのよ、ってジョークにしてたっけ。もう何年も前の話。
閑話休題。
読書熱の高まりと共に、かなり昔にアカウントを作って長らく放置していたブクログも再開してみた。
お気に入りのフレーズを残しておけるのも良き。他のブックサービスを知らないけれど。
今までノートに書き留めていた感想や好きなフレーズ。
ノートを開く、書く。
紙の感触や書くという行為が好きなのでそれも続けていきたいけれど、ブクログはスマホの中にあるので、出先でもハッと思った時に見返したり出来るのが便利。